たつかせているうちに、初さんは見えなくなった。と思うと、何とかして、何とか、てててててと云う歌を唄《うた》う。初さんの姿が見えないのに、初さんの声だけは、坑の四方へ反響して、籠《こも》ったように打ち返してくる。意地の悪い野郎だと思った。始めのうちこそ、追っついてやるから今に見ていろと云う勢《いきおい》で、根限《こんかぎ》り這ったり屈《かが》んだりしたが、残念な事には初さんの歌がだんだん遠くへ行ってしまう。そこで自分は追いつく事はひとまず断念して、初さんのてててててを道案内にして進む事にした。当分はそれで大概の見当《けんとう》がついたが、しまいにはそのててててても怪しくなって、とうとうまるで聞えなくなった時には、さすがに茫然《ぼうぜん》とした。一本道なら初さんなんどを頼りにしなくっても、自力《じりき》で日の当る所まで歩いて出て見せるが、何しろ、長年《ながねん》掘荒した坑《あな》だから、まるで土蜘蛛《つちぐも》の根拠地みたようにいろいろな穴が、とんでもない所に開《あ》いている。滅多《めった》な穴へ這入《はい》るとまた腰きり水に漬《つか》る所か、でなければ、例の逆《さか》さの桟道《さんどう》
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