、自分の決心はいかに真面目《まじめ》であったにしても、さほど差し逼《せま》ってはいなかったんだろう。しかしこのくらい断乎《だんこ》として、現に梯子段《はしごだん》から手を離しかけた、最中に首を出すくらいだから、相手もなかなか深い勢力を張っていたに違ない。もっともこれは死んで銅像になりたがる精神と大した懸隔《けんかく》もあるまいから、普通の人間としては別に怪しむべき願望とも思わないが、何しろこの際の自分には、ちと贅沢《ぜいたく》過ぎたようだ。しかしこの贅沢心のために、自分は発作性《ほっさせい》の急往生を思いとまって、不束《ふつつか》ながら今日まで生きている。全く今はの際《きわ》にも弱点を引張っていた御蔭である。
話すとこうなる。――いよいよ死んじまえと思って、体を心持|後《あと》へ引いて、手の握《にぎり》をゆるめかけた時に、どうせ死ぬなら、ここで死んだって冴《さ》えない。待て待て、出てから華厳《けごん》の瀑《たき》へ行けと云う号令――号令は変だが、全く号令のようなものが頭の中に響き渡った。ゆるめかけた手が自然と緊《しま》った。曇った眼が、急に明かるくなった。カンテラ[#「カンテラ」に傍
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