か》を握らなければならない。それが前に云った通りぬるぬるする。梯子を一つ片づけるのは容易の事ではない。しかもそれが十五ある。初さんは、とっくの昔に消えてなくなった。手を離しさえすれば真暗闇《まっくらやみ》に逆落《さかおと》しになる。離すまいとすれば肩が抜けるばかりだ。自分は七番目の梯子の途中で火焔《かえん》のような息を吹きながら、つくづく労働の困難を感じた。そうして熱い涙で眼がいっぱいになった。
 二三度|上瞼《うわまぶた》と下瞼を打ち合して見たが、依然として、視覚はぼうっとしている。五寸と離れない壁さえたしかには分らない。手の甲で擦《こす》ろうと思うが、あやにく両方とも塞《ふさ》がっている。自分は口惜《くやし》くなった。なぜこんな猿の真似をするように零落《おちぶ》れたのかと思った。倒れそうになる身体《からだ》を、できるだけ前の方にのめらして、梯子に倚《もた》れるだけ倚れて考えた。休んだと註釈する方が適当かも知れない。ただ中途で留まったと云い切ってもよろしい。何しろ動かなくなった。また動けなくなった。じっとして立っていた。カンテラ[#「カンテラ」に傍点]のじいと鳴るのも、足の底へ清水《
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