《からだ》が動かないから、心も働かないのか、心が居坐りだから、身体が怠けるのか、とにかく、双方|相《あい》び合って、生死《せいし》の間に彷徨《ほうこう》していたと見えて、しばらくは万事が不明瞭《ふめいりょう》であった。始めは、どうか一尺立方でもいいから、明かるい空気が吸って見たいような気がしたが、だんだん心が昏《くら》くなる。と坑《あな》のなかの暗いのも忘れてしまう。どっちがどっちだか分らなくなって朦朧《もうろう》のうちに合体稠和《がったいちゅうわ》して来た。しかしけっして寝たんじゃない。しんとして、意識が稀薄になったまでである。しかしその稀薄な意識は、十倍の水に溶いた娑婆気《しゃばッき》であるから、いくら不透明でも正気は失わない。ちょうど差し向いの代りに、電話で話しをするくらいの程度――もしくはこれよりも少しく不明瞭な程度である。かように水平以下に意識が沈んでくるのは、浮世の日が烈《はげ》し過ぎて困る自分には――東京にも田舎《いなか》にもおり終《おお》せない自分には――煩悶《はんもん》の解熱剤《げねつざい》を頓服《とんぷく》しなければならない自分には――神経繊維の端《はじ》の端まで寄
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