くなる。ここを潜《くぐ》り抜けたら、乾いた所へ出られる事かと、受け合われない行先をあてにして、ぐるりと廻ると、足の甲でとまってた水が急に脛《すね》まで来た。この次にはと、辛抱して、右に折れると、がっくり落ちがして膝《ひざ》まで漬《つ》かっちまう。こうなると、動くたんびにざぶざぶ云う。膝で切る波が渦《うず》を捲《ま》いて流れる。その渦がだんだん股《もも》の方へ押し寄せてくる。全く危険だと思った。ことによれば、何かの原因で水が出たんだから、今に坑《あな》のなかが、いっぱいになりゃしないかと思うと急に腰から腹の中までが冷たくなって来た。しかるに初さんは辟易《へきえき》した体《てい》もなく、さっさと泥水を分けて行く。
「大丈夫なんですか」
と後《うしろ》から聞いて見たが、初さんは別に返事もしずに、依然として、ざぶりざぶりと水を押し分けて行く。自分の考えるところによると、いくら銅山でも水に漬《つ》かっていては、仕事ができるはずがない。こうどぶつく以上は、何か変事でもあるか、または廃坑へでも連れ込まれたに違いない。いずれにしても災難だと、不安の念に冒《おか》されながら、もう一遍初さんに聞こうかしら
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