と初さんは、自分の鼻の先へカンテラ[#「カンテラ」に傍点]を差しつけて、徐《おもむろ》に自分の顔を検査し始めた。そうして、命令を下した。
「消して見ねえ」
「どうしてですか」
「どうしてでも好いから、消して見ねえ」
「吹くんですか」
初さんはこの時大きな声を出して笑った。
自分は喫驚《びっくり》して稀有《けう》な顔をしていた。
「冗談《じょうだん》じゃねえ。何が這入《へっ》てると思う。種油《たねあぶら》だよ、しずくぐらいで消《けえ》てたまるもんか」
自分はこれでやっと安心した。
「安心したか。ハハハハ」
と初さんがまた笑った。初さんが笑うたんびに、坑《あな》の中がみんな響き出す。その響が収まると前よりも倍静かになる。ところへかあん、かあんとどこかで鑿《のみ》と槌《つち》を使ってる音が伝わって来る。
「聞えるか」
と、初さんが顋《あご》で相図をした。
「聞えます」
と耳を峙《そばだ》てていると、たちまち催促を受けた。
「さあ行こう。今度《こんだ》あ後《おく》れないように跟《つ》いて来な」
初さんはなかなか機嫌がいい。これは自分が一も二もなく初さんにやられているせいだろうと思った。
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