の甲で、左の上を擦《こす》って、左の足の甲で右の上を擦って、これでもかと歯軋《はぎしり》をした。しかし表へ飛び出す訳にも行かず、寝る勇気はなし、と云って、下へ降りて、車座の中へ割り込んで見る元気は固《もとよ》りない。さっき毒突《どくづ》かれた事を思い出すと、南京虫よりよっぽど厭《いや》だ。夜が明ければいい、夜が明ければいいと思いながら、自分は表へ向いた窓の方へ歩いて行った。するとそこに柱があった。自分は立ちながら、この柱に倚《よ》っ掛った。背中をつけて腰を浮かして、足の裏で身体を持たしていると、両足がずるずる畳の目を滑《すべ》ってだんだん遠くへ行っちまう。それからまた真直《まっすぐ》に立つ。またずるずる滑《すべ》る。また立つ。まずこんな事をしていた。幸い南京虫《ナンキンむし》は出て来なかった。下では時々どっと笑う。
 いても立ってもと云うのは喩《たとえ》だが、そのいても立ってもを、実際に経験したのはこの時である。だから坐るとも立つとも方《かた》のつかない運動をして、中途半端に紛《まぎ》らかしていた。ところがその運動をいつまで根気《こんき》にやったものか覚えていない。いとど疲れている上に
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