、なお手足を疲らして、いかな南京虫でも応《こた》えないほど疲れ切ったんで、始めて寝たもんだろう。夜が明けたら、自分が摺《ず》り落ちた柱の下に、足だけ延ばして、背を丸く蹲踞《うずくま》っていた。
 これほど苦しめられた南京虫も、二日三日と過《た》つにつれて、だんだん痛くなくなったのは妙である。その実、一箇月ばかりしたら、いくら南京虫がいようと、まるで米粒でも、ぞろぞろ転がってるくらいに思って、夜はいつでも、ぐっすり安眠した。もっとも南京虫の方でも日数《ひかず》を積むに従って遠慮してくるそうである。その証拠には新来《きたて》のお客には、べた一面にたかって、夜通し苛《いじ》めるが、少し辛抱していると、向うから、愛想《あいそ》をつかして、あまり寄りつかなくなるもんだと云う。毎日食ってる人間の肉は自然鼻につくからだとも教えたものがあるし、いや肉の方にそれだけの品格が出来て、シキ[#「シキ」に傍点]臭くなるから、虫も恐れ入るんだとも説明したものがある。そうして見るとこの南京虫と坑夫とは、性質《たち》がよく似ている。おそらく坑夫ばかりじゃあるまい、一般の人類の傾向と、この南京虫とはやはり同様の心理に
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