た一人いた。もっとも始めて気がついた時は人間とは思わなかった。向うの柱の中途から、窓の敷居へかけて、帆木綿《ほもめん》のようなものを白く渡して、その幅のなかに包まっていたから、何だか気味が悪かった。しかしよく見ると、白い中から黒いものが斜《はす》に出ている。そうしてそれが人間の毬栗頭《いがぐりあたま》であった。――広い部屋には、自分とこの二人を除《のぞ》いて、誰もいない。ただ電気灯がかんかん点《つ》いている。大変静かだ、と思うとまた下座敷でわっと笑った。さっきの連中か、または作業を済まして帰って来たものが、大勢寄ってふざけ散らしているに違ない。自分はぼんやりして布団のある所まで帰って来た。そうして裸体《はだか》になって、襯衣を振るって、枕元にある着物を着て、帯を締めて、一番しまいに敷いてある布団を叮嚀《ていねい》に畳んで戸棚へ入れた。それから後《あと》はどうして好いか分らない。時間は何時《なんじ》だか、夜《よ》はとうていまだ明けそうにしない。腕組をして立って考えていると、足の甲がまたむずむずする。自分は堪《こら》え切れずに、
「えっ畜生」
と云いながら二三度小踊をした。それから、右の足
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