ぞくするほど寒いのに、腋《わき》の下から汗が出る。
「金しゅうも早く癒《なお》って、嚊《かかあ》を受け出したら好かろう」
「また、市《いち》と入れ代りか。世話あねえ」
「それよりか、うんと稼《かせ》いで、もっと価《ね》に踏める抵当でも取った方が、気が利《き》いてらあ」
「違《ちげえ》ねえ」
と一人が云い出すのを相図に、みんなどっと笑った。自分はこの笑の中に包まれながら、どうしても笑い切れずに下を向いてしまった。見ると膝《ひざ》を並べて畏《かしこ》まっていた。馬鹿らしいと気がついて、胡坐《あぐら》に組み直して見た。しかし腹の中はけっして胡坐をかくほど悠長《ゆうちょう》ではなかった。
その内だんだん日暮に近くなって来る。時間が移るばかりじゃない、天気の具合と、山が囲んでるせいで早く暗くなる。黙って聞いていると、雨垂《あまだれ》の音もしないようだから、ことによると、雨はもう歇《や》んだのかも知れない。しかしこの暗さでは、やっぱり降ってると云う方が当るだろう。窓は固《もとよ》り締め切ってある。戸外《そと》の模様は分りようがない。しかし暗くって湿《しめ》ッぽい空気が障子《しょうじ》の紙を透《こ
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