ほどの山の中だ。それに雨さえ降り出した。雨と云えば雨、霧と云えば霧と云われるくらいな微《かす》かな粒であるが、四方の禿山《はげやま》を罩《こ》め尽した上に、筒抜《つつぬ》けの空を塗り潰《つぶ》して、しとどと落ちて来るんだから、家《うち》の中に坐っていてさえ、糠《ぬか》よりも小さい湿《しめ》り気《け》が、毛穴から腹の底へ沁《し》み込むような心持である。火の気がなくってはとうていやり切れるものじゃない。
 自分が好い加減な所へ席を占めて、いささかながら囲炉裏のほとぼりを顔に受けていると、今度は存外にも度外視されて、思ったよりも調戯《からか》われずに済んだ。これはこっちから進んで獰猛の仲間入りをしたため、向うでも普通の獰猛として取扱うべき奴だと勘弁してくれたのか、それとも先刻《さっき》のジャンボー[#「ジャンボー」に傍点]で不意に気が変った成行《なりゆき》として、自分の事をしばらく忘れてくれたのか、または冷笑《ひやかし》の種が尽きたか、あるいは毒突《どくづ》くのに飽きたんだか、――何しろ自分が席を改めてから、自分の気は比較的楽になった。そうして囲炉裏の傍の話はやっぱりジャンボー[#「ジャンボ
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