》とした。これはただ保養に寝ていた人ではない。全くの病人である。しかも自分だけで起居《たちい》のできないような重体の病人である。年は五十に近い。髯《ひげ》は幾日も剃《そ》らないと見えてぼうぼうと延びたままである。いかな獰猛《どうもう》も、こう憔悴《やつれ》ると憐《あわ》れになる。憐れになり過ぎて、逆にまた怖《こわ》くなる。自分がこの顔を一目見た時の感じは憐れの極《きょく》全く怖《こわ》かった。
病人は二人に支えられながら、釣られるように、利《き》かない足を運ばして、窓の方へ近寄ってくる。この有様を見ていた、窓際の多人数《たにんず》は、さも面白そうに囃《はや》し立てる。
「よう、金《きん》しゅう早く来いよ。今ジャンボー[#「ジャンボー」に傍点]が通るところだ。早く来て見ろよ」
「己《おら》あジャンボー[#「ジャンボー」に傍点]なんか見たかねえよ」
と病人は、無体《むたい》に引き摺《ず》られながら、気のない声で返事をするうちに、見たいも、見たくないもありゃしない。たちまち窓の障子《しょうじ》の角《かど》まで圧《お》しつけられてしまった。
じゃじゃん、じゃららんとジャンボー[#「ジャンボ
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