後向《うしろむき》だから顔は見えない。すると、
「うん金公に見せてやれ」
とすぐ応じた者がある。この言葉が終るか、終らない間《ま》に、五つ六つの黒い頭がずらりとこっちを向いた。自分はまた何か云われる事と覚悟して仕方なしに、今までの態度で立っていると、不思議にも振り返った眼は自分の方に着いていない。広い部屋の片隅に遠く走った様子だから、何物がいる事かと、自分も後を追っ懸《か》けて、首を捻《ね》じ向けると、――寝ている。薄い布団《ふとん》をかけて一人寝ている。
「おい金州《きんしゅう》」
と一人が大きな声を出したが、寝ているものは返事をしない。
「おい金しゅう起きろやい」
と怒鳴《どなり》つけるように呼んだが、まだ何とも返事がないので、三人ばかり窓を離れてとうとう迎《むかえ》に出掛けた。被《かぶ》ってる布団《ふとん》を手荒にめくると、細帯をした人間が見えた。同時に、
「起きろってば、起きろやい。好いものを見せてやるから」
と云う声も聞えた。やがて横になってた男が、二人の肩に支えられて立ち上った。そうしてこっちを向いた。その時、その刹那《せつな》、その顔を一目見たばかりで自分は思わず慄《ぞっ
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