撲《すもう》をとって暮らしていると云っても差支《さしつかえ》なかろう。それで、みんなが立ち尽したあとから、自分も立った。そうしてやっぱり窓の方へ歩いて行った。黒い頭で下は塞《ふさ》がっている上から背伸《せえのび》をして見下《みおろ》すと、斜《はす》に曲ってる向《むこう》の石垣の角から、紺《こん》の筒袖《つつそで》を着た男が二人《ふたあり》出た。あとからまた二人出た。これはいずれも金盥を圧《お》しつぶして薄《うす》っ片《ぺら》にしたようなものを両手に一枚ずつ持っている。ははあ、あれを叩くんだと思う拍子に、二人は両手をじゃじゃんと打ち合わした。その不調和な音が切っ立った石垣に突き当って、後《うしろ》の禿山《はげやま》に響いて、まだやまないうちに、じゃららんとまた一組が後《あと》から鳴らし立てて現れた。たと思うとまた現れる。今度は金盥を持っていない。その代り木唄――さっきは木唄と云った。しかしこの時、彼らの揚げた声は、木唄と云わんよりはむしろ浪花節《なにわぶし》で咄喊《とっかん》するような稀代《きたい》な調子であった。
「おい金公《きんこう》はいねえか」
と、黒い頭の一つが怒鳴《どな》った。
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