ても一月《ひとつき》と辛抱は出来ないよ。悪い事は云わねえから帰れ。分ったろう」
 これは比較的|真面目《まじめ》な忠告であった。この忠告の最中は、さすがの獰悪派《どうあくは》もおとなしく交《まぜ》っ返しもせずに聞いていた。その惰性で忠告が済んだあとも、一時は静であった。もっともこれはこの坑夫に多少の勢力があるんで、その勢力に対しての遠慮かも知れないと勘づいた。その時自分は何となく心の底で愉快だった。この坑夫だって、ほかの坑夫だって、人相にこそ少しの変化はあれ、やっぱり一つ穴でこつこつ鉱塊《あらがね》を欠いている分の事だろう。そう芸に巧拙《こうせつ》のあるはずはない。して見ると、この男の勢力は全く字が読めて、物が解って、分別があって――一口に云うと教育を受けたせいに違ない。自分は今こんなに馬鹿にされている。ほとんど最下等の労働者にさえ歯《よわい》されない人非人《にんぴにん》として、多勢《たぜい》の侮辱を受けている。しかし一度この社会に首を突込《つっこ》んで、獰猛組《どうもうぐみ》の一人となりすましたら、一月二月と暮して行くうちには、この男くらいの勢力を得る事はできるかも知れない。できるだ
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