ても、いいですが、全体どんな事をするんですか」
と自分はここで再び聞き直して見た。
「大変|儲《もう》かるんだが、やって見る気はあるかい。儲かる事は受合《うけあい》なんだ」
どてら[#「どてら」に傍点]は上機嫌の体《てい》で、にこにこ笑いながら、自分の返事を待っている。どうせどてら[#「どてら」に傍点]の笑うんだから、愛嬌《あいきょう》にもなんにもなっちゃいない。元来《がんらい》笑うだけ損になるようにでき上がってる顔だ。ところがその笑い方が妙になつかしく思われて
「ええやって見ましょう」
と受けてしまった。
「やって見る? そいつあ結構だ。君|儲《もう》かるよ」
「そんなに儲けなくっても、いいですが……」
「え?」
どてら[#「どてら」に傍点]はこの時妙な声を出した。
「全体どんな仕事なんですか」
「やるなら話すが、やるだろうね、お前さん。話した後で厭《いや》だなんて云われちゃ困るが。きっとやるだろうね」
どてら[#「どてら」に傍点]はむやみに念を押す。自分はそこで、
「やる気です」
と答えた。しかしこの答は前のように自然天然には出なかった。云わばいきみ[#「いきみ」に傍点]出し
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