螺吹は大変|怒《おこ》って、巡査の服を脱いで、付け髯を紙屑籠《かみくずかご》へ抛《ほう》り込んで、今度は大金持ちの服装《なり》をして出て来たそうです。今の世で云うと岩崎男爵のような顔をするんですとさ。おかしいわね」
「岩崎のような顔ってどんな顔なの?」
「ただ大きな顔をするんでしょう。そうして何もしないで、また何も云わないで地蔵の周《まわ》りを、大きな巻煙草《まきたばこ》をふかしながら歩行《ある》いているんですとさ」
「それが何になるの?」
「地蔵様を煙《けむ》に捲《ま》くんです」
「まるで噺《はな》し家《か》の洒落《しゃれ》のようね。首尾よく煙《けむ》に捲《ま》いたの?」
「駄目ですわ、相手が石ですもの。ごまかしもたいていにすればいいのに、今度は殿下さまに化けて来たんだって。馬鹿ね」
「へえ、その時分にも殿下さまがあるの?」
「有るんでしょう。八木先生はそうおっしゃってよ。たしかに殿下様に化けたんだって、恐れ多い事だが化けて来たって――第一不敬じゃありませんか、法螺吹《ほらふ》きの分際《ぶんざい》で」
「殿下って、どの殿下さまなの」
「どの殿下さまですか、どの殿下さまだって不敬ですわ
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