る。先日紹介をしたごとく依然としてがーがー、げーげーを持続している。やがて頭を分け終って、西洋|手拭《てぬぐい》を肩へかけて、茶の間へ出御《しゅつぎょ》になると、超然として長火鉢の横に座を占めた。長火鉢と云うと欅《けやき》の如輪木《じょりんもく》か、銅《あか》の総落《そうおと》しで、洗髪《あらいがみ》の姉御が立膝で、長煙管《ながぎせる》を黒柿《くろがき》の縁《ふち》へ叩きつける様を想見する諸君もないとも限らないが、わが苦沙弥《くしゃみ》先生の長火鉢に至っては決して、そんな意気なものではない、何で造ったものか素人《しろうと》には見当《けんとう》のつかんくらい古雅なものである。長火鉢は拭き込んでてらてら光るところが身上《しんしょう》なのだが、この代物《しろもの》は欅か桜か桐《きり》か元来不明瞭な上に、ほとんど布巾《ふきん》をかけた事がないのだから陰気で引き立たざる事|夥《おびただ》しい。こんなものをどこから買って来たかと云うと、決して買った覚《おぼえ》はない。そんなら貰ったかと聞くと、誰もくれた人はないそうだ。しからば盗んだのかと糺《ただ》して見ると、何だかその辺が曖昧《あいまい》である。
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