ェ団体として細胞のように崩《くず》れたり、持ち上ったり、持ち上ったり、崩れたりして暮して行くのを社会と云うのではないか知らん。その中で多少|理窟《りくつ》がわかって、分別のある奴はかえって邪魔になるから、瘋癲院《ふうてんいん》というものを作って、ここへ押し込めて出られないようにするのではないかしらん。すると瘋癲院に幽閉されているものは普通の人で、院外にあばれているものはかえって気狂である。気狂も孤立している間はどこまでも気狂にされてしまうが、団体となって勢力が出ると、健全の人間になってしまうのかも知れない。大きな気狂が金力や威力を濫用《らんよう》して多くの小気狂《しょうきちがい》を使役《しえき》して趨\を働いて、人から立派な男だと云われている例は少なくない。何が何だか分らなくなった」
以上は主人が当夜|煢々《けいけい》たる孤灯の下《もと》で沈思熟慮した時の心的作用をありのままに描《えが》き出したものである。彼の頭脳の不透明なる事はここにも著るしくあらわれている。彼はカイゼルに似た八字髯《はちじひげ》を蓄《たくわ》うるにもかかわらず狂人と常人の差別さえなし得ぬくらいの凡倉《ぼんくら》であ
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