ゥ》し僕のところへ泊りがけに来て例の通り消極的の修養と云う議論をしてね。いつまで立っても同じ事を繰り返してやめないから、僕が君もう寝《ね》ようじゃないかと云うと、先生気楽なものさ、いや僕は眠くないとすまし切って、やっぱり消極論をやるには迷惑したね。仕方がないから君は眠くなかろうけれども、僕の方は大変眠いのだから、どうか寝てくれたまえと頼むようにして寝かしたまではよかったが――その晩|鼠《ねずみ》が出て独仙君の鼻のあたまを噛《かじ》ってね。夜なかに大騒ぎさ。先生悟ったような事を云うけれども命は依然として惜しかったと見えて、非常に心配するのさ。鼠の毒が総身《そうしん》にまわると大変だ、君どうかしてくれと責めるには閉口したね。それから仕方がないから台所へ行って紙片《かみぎれ》へ飯粒を貼《は》ってごまかしてやったあね」
「どうして」
「これは舶来の膏薬《こうやく》で、近来|独逸《ドイツ》の名医が発明したので、印度人《インドじん》などの毒蛇に噛《か》まれた時に用いると即効があるんだから、これさえ貼っておけば大丈夫だと云ってね」
「君はその時分からごまかす事に妙を得ていたんだね」
「……すると独仙
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