コ駄《まないたげた》を穿《は》いて、この間の枝でこしらえましたと、聞きもせんのに吹聴《ふいちょう》していた。ずるい奴だ。桐はあるが吾輩及び主人家族にとっては一文にもならない桐である。玉を抱《いだ》いて罪ありと云う古語があるそうだが、これヘ桐を生《は》やして銭《ぜに》なしと云ってもしかるべきもので、いわゆる宝の持ち腐《ぐさ》れである。愚《ぐ》なるものは主人にあらず、吾輩にあらず、家主《やぬし》の伝兵衛である。いないかな、いないかな、下駄屋はいないかなと桐の方で催促しているのに知らん面《かお》をして屋賃《やちん》ばかり取り立てにくる。吾輩は別に伝兵衛に恨《うらみ》もないから彼の悪口《あっこう》をこのくらいにして、本題に戻ってこの空地《あきち》が騒動の種であると云う珍譚《ちんだん》を紹介|仕《つかまつ》るが、決して主人にいってはいけない。これぎりの話しである。そもそもこの空地に関して第一の不都合なる事は垣根のない事である。吹き払い、吹き通し、抜け裏、通行御免天下晴れての空地である。ある[#「ある」に傍点]と云うと嘘をつくようでよろしくない。実を云うとあった[#「あった」に傍点]のである。しか
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