ョんかくかん》という、名前だけ立派な安下宿の安屋根が遠慮なく見えるから、しかく先生を想像するのにはよほど骨の折れるのは無論である。しかしこの下宿が群鶴館なら先生の居《きょ》はたしかに臥竜窟《がりょうくつ》くらいな価値はある。名前に税はかからんから御互にえらそうな奴を勝手次第に付ける事として、この幅五六間の空地が竹垣を添うて東西に走る事約十間、それから、たちまち鉤《かぎ》の手に屈曲して、臥竜窟の北面を取り囲んでいる。この北面が騒動の種である。本来なら空地を行き尽してまたあき地、とか何とか威張ってもいいくらいに家の二側《ふたがわ》を包んでいるのだが、臥竜窟《がりょうくつ》の主人は無論窟内の霊猫《れいびょう》たる吾輩すらこのあき地には手こずっている。南側に檜《ひのき》が幅を利《き》かしているごとく、北側には桐《きり》の木が七八本行列している。もう周囲一尺くらいにのびているから下駄屋さえ連れてくればいい価《ね》になるんだが、借家《しゃくや》の悲しさには、いくら気が付いても実行は出来ん。主人に対しても気の毒である。せんだって学校の小使が来て枝を一本切って行ったが、そのつぎに来た時は新らしい桐の俎
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