オ話しは過去へ溯《さかのぼ》らんと源因が分からない。源因が分からないと、医者でも処方《しょほう》に迷惑する。だからここへ引き越して来た当時からゆっくりと話し始める。吹き通しも夏はせいせいして心持ちがいいものだ、不用心だって金のないところに盗難のあるはずはない。だから主人の家に、あらゆる塀《へい》、垣、乃至《ないし》は乱杭《らんぐい》、逆茂木《さかもぎ》の類は全く不要である。しかしながらこれは空地の向うに住居《すまい》する人間もしくは動物の種類|如何《いかん》によって決せらるる問題であろうと思う。従ってこの問題を決するためには勢い向う側に陣取っている君子の性質を明かにせんければならん。人間だか動物だか分らない先に君子と称するのははなはだ早計のようではあるが大抵君子で間違はない。梁上《りょうじょう》の君子などと云って泥棒さえ君子と云う世の中である。但《ただ》しこの場合における君子は決して警察の厄介になるような君子ではない。警察の厄介にならない代りに、数でこなした者と見えて沢山いる。うじゃうじゃいる。落雲館《らくうんかん》と称する私立の中学校――八百の君子をいやが上に君子に養成するために毎月
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