ュ々御寒うございますから、どうぞ御緩《ごゆっ》くり――どうぞ白い湯へ出たり這入《はい》ったりして、ゆるりと御あったまり下さい。――番頭さんや、どうか湯加減をよく見て上げてな」とよどみなく述べ立てた。番頭さんは「おーい」と答えた。和唐内は「愛嬌《あいきょう》ものだね。あれでなくては商買《しょうばい》は出来ないよ」と大《おおい》に爺さんを激賞した。吾輩は突然この異《い》な爺さんに逢ってちょっと驚ろいたからこっちの記述はそのままにして、しばらく爺さんを専門に観察する事にした。爺さんはやがて今|上《あが》り立《た》ての四つばかりの男の子を見て「坊ちゃん、こちらへおいで」と手を出す。小供は大福を踏み付けたような爺さんを見て大変だと思ったか、わーっと悲鳴を揚《あ》げてなき出す。爺さんは少しく不本意の気味で「いや、御泣きか、なに? 爺さんが恐《こわ》い? いや、これはこれは」と感嘆した。仕方がないものだからたちまち機鋒《きほう》を転じて、小供の親に向った。「や、これは源さん。今日は少し寒いな。ゆうべ、近江屋《おうみや》へ這入った泥棒は何と云う馬鹿な奴じゃの。あの戸の潜《くぐ》りの所を四角に切り破って
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