と婆《ばあ》さんと僕と四人坐ったんですがね。さぞ御腹《おなか》が御減《おへ》りでしょうと云いますから、何でも善いから早く食わせ給えと請求したんです。すると爺さんがせっかくの御客さまだから蛇飯《へびめし》でも炊《た》いて上げようと云うんです。さあこれからがいよいよ失恋に取り掛るところだからしっかりして聴きたまえ」「先生しっかりして聴く事は聴きますが、なんぼ越後の国だって冬、蛇がいやしますまい」「うん、そりゃ一応もっともな質問だよ。しかしこんな詩的な話しノなるとそう理窟《りくつ》にばかり拘泥《こうでい》してはいられないからね。鏡花の小説にゃ雪の中から蟹《かに》が出てくるじゃないか」と云ったら寒月君は「なるほど」と云ったきりまた謹聴の態度に復した。
「その時分の僕は随分|悪《あく》もの食いの隊長で、蝗《いなご》、なめくじ、赤蛙などは食い厭《あ》きていたくらいなところだから、蛇飯は乙《おつ》だ。早速御馳走になろうと爺さんに返事をした。そこで爺さん囲炉裏の上へ鍋《なべ》をかけて、その中へ米を入れてぐずぐず煮出したものだね。不思議な事にはその鍋《なべ》の蓋《ふた》を見ると大小十個ばかりの穴があいて
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