いる。その穴から湯気がぷうぷう吹くから、旨《うま》い工夫をしたものだ、田舎《いなか》にしては感心だと見ていると、爺さんふと立って、どこかへ出て行ったがしばらくすると、大きな笊《ざる》を小脇に抱《か》い込んで帰って来た。何気なくこれを囲炉裏の傍《そば》へ置いたから、その中を覗《のぞ》いて見ると――いたね。長い奴が、寒いもんだから御互にとぐろ[#「とぐろ」に傍点]の捲《ま》きくらをやって塊《かた》まっていましたね」「もうそんな御話しは廃《よ》しになさいよ。厭らしい」と細君は眉に八の字を寄せる。「どうしてこれが失恋の大源因になるんだからなかなか廃せませんや。爺さんはやがて左手に鍋の蓋をとって、右手に例の塊まった長い奴を無雑作《むぞうさ》につかまえて、いきなり鍋の中へ放《ほう》り込んで、すぐ上から蓋をしたが、さすがの僕もその時ばかりははっと息の穴が塞《ふさが》ったかと思ったよ」「もう御やめになさいよ。気味《きび》の悪るい」と細君しきりに怖《こわ》がっている。「もう少しで失恋になるからしばらく辛抱《しんぼう》していらっしゃい。すると一分立つか立たないうちに蓋の穴から鎌首《かまくび》がひょいと一つ
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