雑な問題です、第一蛙の眼球のレンズの構造がそんな単簡《たんかん》なものでありませんからね。それでいろいろ実験もしなくちゃなりませんがまず丸い硝子《ガラス》の球《たま》をこしらえてそれからやろうと思っています」「硝子の球なんかガラス屋へ行けば訳ないじゃないか」「どうして――どうして」と寒月先生少々|反身《そりみ》になる。「元来|円《えん》とか直線とか云うのは幾何学的のもので、あの定義に合ったような理想的な円や直線は現実世界にはないもんです」「ないもんなら、廃《よ》したらよかろう」と迷亭が口を出す。「それでまず実験上|差《さ》し支《つか》えないくらいな球を作って見ようと思いましてね。せんだってからやり始めたのです」「出来たかい」と主人が訳のないようにきく。「出来るものですか」と寒月君が云ったが、これでは少々矛盾だと気が付いたと見えて「どうもむずかしいです。だんだん磨《す》って少しこっち側の半径が長過ぎるからと思ってそっちを心持落すと、さあ大変今度は向側《むこうがわ》が長くなる。そいつを骨を折ってようやく磨《す》り潰《つぶ》したかと思うと全体の形がいびつ[#「いびつ」に傍点]になるんです。や
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