がありましょう、ちょっと、覗《のぞ》いて御覧なさい」「いやですわまたきっと馬鹿になさるんだから」「そう信用がなくっちゃ困ったね。だが欺《だま》されたと思って、ちょいと覗いて御覧なさいな。え? 厭《いや》ですか、ちょっとでいいから」と鋏《はさみ》を細君に渡す。細君は覚束《おぼつか》なげに鋏を取りあげて、例の蠅の眼玉の所へ自分の眼玉を付けてしきりに覘《ねらい》をつけている。「どうです」「何だか真黒ですわ」「真黒じゃいけませんね。も少し障子の方へ向いて、そう鋏を寝かさずに――そうそうそれなら見えるでしょう」「おやまあ写真ですねえ。どうしてこんな小さな写真を張り付けたんでしょう」「そこが面白いところでさあ」と細君と迷亭はしきりに問答をしトいる。最前から黙っていた主人はこの時急に写真が見たくなったものと見えて「おい俺にもちょっと覧《み》せろ」と云うと細君は鋏を顔へ押し付けたまま「実に奇麗です事、裸体の美人ですね」と云ってなかなか離さない。「おいちょっと御見せと云うのに」「まあ待っていらっしゃいよ。美くしい髪ですね。腰までありますよ。少し仰向《あおむ》いて恐ろしい背《せい》の高い女だ事、しかし美人
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