ぎょうこう》の仕合せだと吾輩は看破した。「その鋏がどうして十四通りに使えます」と聞くや否や迷亭君は大得意な調子で「今一々説明しますから聞いていらっしゃい。いいですか。ここに三日月形《みかづきがた》の欠け目がありましょう、ここへ葉巻を入れてぷつりと口を切るんです。それからこの根にちょと細工がありましょう、これで針金をぽつぽつやりますね。次には平たくして紙の上へ横に置くと定規《じょうぎ》の用をする。また刃《は》の裏には度盛《どもり》がしてあるから物指《ものさし》の代用も出来る。こちらの表にはヤスリ[#「ヤスリ」に傍点]が付いているこれで爪を磨《す》りまさあ。ようがすか。この先《さ》きを螺旋鋲《らせんびょう》の頭へ刺し込んでぎりぎり廻すと金槌《かなづち》にも使える。うんと突き込んでこじ開けると大抵の釘付《くぎづけ》の箱なんざあ苦もなく蓋《ふた》がとれる。まった、こちらの刃の先は錐《きり》に出来ている。ここん所《とこ》は書き損いの字を削《けず》る場所で、ばらばらに離すと、ナイフとなる。一番しまいに――さあ奥さん、この一番しまいが大変面白いんです、ここに蠅《はえ》の眼玉くらいな大きさの球《たま》
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