よさそうじゃないか。実業家も悪くもないが我々のうちは駄目だ。実業家になるならずっと上にならなくっちゃいかん。下の方になるとやはりつまらん御世辞を振り撒《ま》いたり、好かん猪口《ちょこ》をいただきに出たり随分|愚《ぐ》なもんだよ」
「僕は実業家は学校時代から大嫌だ。金さえ取れれば何でもする、昔で云えば素町人《すちょうにん》だからな」と実業家を前に控《ひか》えて太平楽を並べる。
「まさか――そうばかりも云えんがね、少しは下品なところもあるのさ、とにかく金《かね》と情死《しんじゅう》をする覚悟でなければやり通せないから――ところがその金と云う奴が曲者《くせもの》で、――今もある実業家の所へ行って聞いて来たんだが、金を作るにも三角術を使わなくちゃいけないと云うのさ――義理をかく[#「かく」に傍点]、人情をかく[#「かく」に傍点]、恥をかく[#「かく」に傍点]これで三角になるそうだ面白いじゃないかアハハハハ」
「誰だそんな馬鹿は」
「馬鹿じゃない、なかなか利口な男なんだよ、実業界でちょっと有名だがね、君知らんかしら、ついこの先の横丁にいるんだが」
「金田か? 何《な》んだあんな奴」
「大変怒って
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