た。――主人が偕老同穴《かいろうどうけつ》を契《ちぎ》った夫人の脳天の真中には真丸《まんまる》な大きな禿《はげ》がある。しかもその禿が暖かい日光を反射して、今や時を得顔に輝いている。思わざる辺《へん》にこの不思議な大発見をなした時の主人の眼は眩《まば》ゆい中に充分の驚きを示して、烈しい光線で瞳孔《どうこう》の開くのも構わず一心不乱に見つめている。主人がこの禿を見た時、第一彼の脳裏《のうり》に浮んだのはかの家《いえ》伝来の仏壇に幾世となく飾り付けられたる御灯明皿《おとうみょうざら》である。彼の一家《いっけ》は真宗で、真宗では仏壇に身分不相応な金を掛けるのが古例である。主人は幼少の時その家の倉の中に、薄暗く飾り付けられたる金箔《きんぱく》厚き厨子sずし》があって、その厨子の中にはいつでも真鍮《しんちゅう》の灯明皿がぶら下って、その灯明皿には昼でもぼんやりした灯《ひ》がついていた事を記憶している。周囲が暗い中にこの灯明皿が比較的明瞭に輝やいていたので小供心にこの灯を何遍となく見た時の印象が細君の禿に喚《よ》び起されて突然飛び出したものであろう。灯明皿は一分立たぬ間《ま》に消えた。この度《たび
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