れませんから、予《あらかじ》め御注意をしておきます。――で愚見によりますと鼻の発達は吾々人間が鼻汁《はな》をかむと申す微細なる行為の結果が自然と蓄積してかく著明なる現象を呈出したものでございます」「佯《いつわ》りのない愚見だ」とまた主人が寸評を挿入《そうにゅう》する。「御承知の通り鼻汁《はな》をかむ時は、是非鼻を抓みます、鼻を抓んで、ことにこの局部だけに刺激を与えますと、進化論の大原則によって、この局部はこの刺激に応ずるがため他に比例して不相当な発達を致します。皮も自然堅くなります、肉も次第に硬《かた》くなります。ついに凝《こ》って骨となります」「それは少し――そう自由に肉が骨に一足飛に変化は出来ますまい」と理学士だけあって寒月君が抗議を申し込む。迷亭は何喰わぬ顔で陳《の》べ続ける。「いや御不審はごもっともですが論より証拠この通り骨があるから仕方がありません。すでに骨が出来る。骨は出来ても鼻汁《はな》は出ますな。出ればかまずにはいられません。この作用で骨の左右が削《けず》り取られて細い高い隆起と変化して参ります――実に恐ろしい作用です。点滴《てんてき》の石を穿《うが》つがごとく、賓頭顱
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