は空吹く風の音にもざわつく。夜となく日となく磨きに磨く刃の冴《さえ》は、人を屠《ほふ》る遺恨の刃を磨くのである。君の為め国の為めなる美しき名を藉《か》りて、毫釐《ごうり》の争に千里の恨を報ぜんとする心からである。正義と云い人道と云うは朝|嵐《あらし》に翻がえす旗にのみ染め出《いだ》すべき文字《もんじ》で、繰り出す槍の穂先には瞋恚《しんい》の※[#「(諂−言)+炎」、第3水準1−87−64]《ほむら》が焼け付いている。狼は如何にして鴉と戦うべき口実を得たか知らぬ。鴉は何を叫んで狼を誣《し》ゆる積りか分らぬ。只時ならぬ血潮とまで見えて迸《ほと》ばしりたる酒の雫《しずく》の、胸を染めたる恨を晴さでやとルーファスがセント・ジョージに誓えるは事実である。尊き銘は剣にこそ彫れ、抜き放ちたる光の裏《うち》に遠吠ゆる狼を屠らしめたまえとありとあらゆるセイントに夜鴉の城主が祈念を凝《こら》したるも事実である。両家の間の戦は到底免かれない。いつ[#「いつ」に傍点]というだけが問題である。
末の世の尽きて、その末の世の残るまでと誓いたる、クララの一門に弓をひくはウィリアムの好まぬところである。手創《てきず
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