どの間隔に座を占める。
「左へ寄っていやはったら、大丈夫どす、波はかかりまへん」と船頭が云う。船頭の数《かず》は四人である。真っ先なるは、二間の竹竿《たけざお》、続《つ》づく二人は右側に櫂《かい》、左に立つは同じく竿である。
 ぎいぎいと櫂《かい》が鳴る。粗削《あらけず》りに平《たいら》げたる樫《かし》の頸筋《くびすじ》を、太い藤蔓《ふじづる》に捲《ま》いて、余る一尺に丸味を持たせたのは、両の手にむんずと握る便りである。握る手の節《ふし》の隆《たか》きは、真黒きは、松の小枝に青筋を立てて、うんと掻《か》く力の脈を通わせたように見える。藤蔓に頸根《くびね》を抑えられた櫂が、掻《か》くごとに撓《しわ》りでもする事か、強《こわ》き項《うなじ》を真直《ますぐ》に立てたまま、藤蔓と擦《す》れ、舷と擦れる。櫂は一掻ごとにぎいぎいと鳴る。
 岸は二三度うねりを打って、音なき水を、停《とど》まる暇なきに、前へ前へと送る。重《かさ》なる水の蹙《しじま》って行く、頭《こうべ》の上には、山城《やましろ》を屏風《びょうぶ》と囲う春の山が聳《そび》えている。逼《せま》りたる水はやむなく山と山の間に入る。帽に照る
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