にある」
「有ってたくさんだ。そんな茶碗は洗ったくらいじゃ追《おっ》つかない。壊してしまわなけりゃ直らない厄介物《やっかいぶつ》だ。全体茶人の持ってる道具ほど気に食わないものはない。みんな、ひねくれている。天下の茶器をあつめてことごとく敲《たた》き壊してやりたい気がする。何ならついでだからもう一つ二つ茶碗を壊して行こうじゃないか」
「ふうん、一個何銭ぐらいかな」
 二人は茶碗の代を払って、停車場《ステーション》へ来る。
 浮かれ人を花に送る京の汽車は嵯峨《さが》より二条《にじょう》に引き返す。引き返さぬは山を貫いて丹波《たんば》へ抜ける。二人は丹波行の切符を買って、亀岡《かめおか》に降りた。保津川《ほづがわ》の急湍《きゅうたん》はこの駅より下《くだ》る掟《おきて》である。下るべき水は眼の前にまだ緩《ゆる》く流れて碧油《へきゆう》の趣《おもむき》をなす。岸は開いて、里の子の摘《つ》む土筆《つくし》も生える。舟子《ふなこ》は舟を渚《なぎさ》に寄せて客を待つ。
「妙な舟だな」と宗近君が云う。底は一枚板の平らかに、舷《こべり》は尺と水を離れぬ。赤い毛布《けっと》に煙草盆を転がして、二人はよきほ
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