繽紛絡繹《ひんぷんらくえき》と嵐山《らんざん》に行く。「あれだ」と甲野さんが云う。二人はまた色の世界に出た。
天竜寺《てんりゅうじ》の門前を左へ折れれば釈迦堂《しゃかどう》で右へ曲れば渡月橋《とげつきょう》である。京は所の名さえ美しい。二人は名物と銘打った何やらかやらをやたらに並べ立てた店を両側に見て、停車場《ステーション》の方へ旅衣《たびごろも》七日《なのか》余りの足を旅心地に移す。出逢うは皆京の人である。二条《にじょう》から半時《はんとき》ごとに花時を空《あだ》にするなと仕立てる汽車が、今着いたばかりの好男子好女子をことごとく嵐山の花に向って吐き送る。
「美しいな」と宗近君はもう天下の大勢《たいせい》を忘れている。京ほどに女の綺羅《きら》を飾る所はない。天下の大勢も、京女《きょうおんな》の色には叶《かな》わぬ。
「京都のものは朝夕都踊りをしている。気楽なものだ」
「だから小野的だと云うんだ」
「しかし都踊はいいよ」
「悪《わ》るくないね。何となく景気がいい」
「いいえ。あれを見るとほとんど異性《セックス》の感がない。女もあれほどに飾ると、飾りまけがして人間の分子が少なくなる」
「
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