角度から同時に見上げた。
「明かだ」と甲野さんは杖《つえ》を停《とど》めた。
「あの堂は木造でも容易に壊す事が出来ないように見える」
「つまり恰好《かっこう》が旨《うま》くそう云う風に出来てるんだろう。アリストートルのいわゆる理形《フォーム》に適《かな》ってるのかも知れない」
「だいぶむずかしいね。――アリストートルはどうでも構わないが、この辺の寺はどれも、一種妙な感じがするのは奇体だ」
「舟板塀《ふないたべい》趣味《しゅみ》や御神灯《ごじんとう》趣味《しゅみ》とは違うさ。夢窓国師《むそうこくし》が建てたんだもの」
「あの堂を見上げて、ちょっと変な気になるのは、つまり夢窓国師になるんだな。ハハハハ。夢窓国師も少しは話せらあ」
「夢窓国師や大燈国師になるから、こんな所を逍遥《しょうよう》する価値があるんだ。ただ見物したって何になるもんか」
「夢窓国師も家根《やね》になって明治まで生きていれば結構だ。安直《あんちょく》な銅像よりよっぽどいいね」
「そうさ、一目瞭然《いちもくりょうぜん》だ」
「何が」
「何がって、この境内《けいだい》の景色《けしき》がさ。ちっとも曲っていない。どこまでも明ら
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