んだからたしかだ」
「君これからどこかへ行くのかい」
「うん、天気がいいから遊ぶんだ。どうだいっしょに行かんか」
「僕は少し用があるから――しかしそこまでいっしょに出よう」
門口《かどぐち》で分れた小野さんの足は甲野の邸に向った。
五
山門を入る事一歩にして、古き世の緑《みど》りが、急に左右から肩を襲う。自然石《じねんせき》の形状《かたち》乱れたるを幅一間に行儀よく並べて、錯落《さくらく》と平らかに敷き詰めたる径《こみち》に落つる足音は、甲野《こうの》さんと宗近《むねちか》君の足音だけである。
一条《いちじょう》の径の細く直《すぐ》なるを行き尽さざる此方《こなた》から、石に眼を添えて遥《はる》かなる向うを極《きわ》むる行き当りに、仰《あお》げば伽藍《がらん》がある。木賊葺《とくさぶき》の厚板が左右から内輪にうねって、大《だい》なる両の翼を、険《けわ》しき一本の背筋《せすじ》にあつめたる上に、今一つ小さき家根《やね》が小さき翼を伸《の》して乗っかっている。風抜《かざぬ》きか明り取りかと思われる。甲野さんも、宗近君もこの精舎《しょうじゃ》を、もっとも趣きある横側の
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