しいから、こんな悪戯《いたずら》をしたんじゃない。こう壊してしまえば僕の精神は君らに分るだろう。これも第一義の活動の一部分だ。なあ甲野さん」
「そうだ」
呆然《ぼうぜん》として立った藤尾の顔は急に筋肉が働かなくなった。手が硬《かた》くなった。足が硬くなった。中心を失った石像のように椅子を蹴返して、床《ゆか》の上に倒れた。
十九
凝《こ》る雲の底を抜いて、小一日《こいちにち》空を傾けた雨は、大地の髄《ずい》に浸《し》み込むまで降って歇《や》んだ。春はここに尽きる。梅に、桜に、桃に、李《すもも》に、かつ散り、かつ散って、残る紅《くれない》もまた夢のように散ってしまった。春に誇るものはことごとく亡《ほろ》ぶ。我《が》の女は虚栄の毒を仰いで斃《たお》れた。花に相手を失った風は、いたずらに亡《な》き人の部屋に薫《かお》り初《そ》める。
藤尾は北を枕に寝る。薄く掛けた友禅《ゆうぜん》の小夜着《こよぎ》には片輪車《かたわぐるま》を、浮世らしからぬ恰好《かっこう》に、染め抜いた。上には半分ほど色づいた蔦《つた》が一面に這《は》いかかる。淋《さみ》しき模様である。動く気色《けし
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