づけ始めた。机の抽出《ひきだし》を一つずつ抜いて、いつとなく溜った往復の書類を裂いては捨て、裂いては捨る。床《ゆか》の上は千切れた半切《はんきれ》で膝の所だけが堆《うずたか》くなった。甲野さんは乱るる反故屑《ほごくず》を踏みつけて立った。今度は抽出《ひきだし》から一枚、二枚と細字《さいじ》に認《したた》めた控を取り出す。中には五六|頁《ページ》纏《まと》めて綴じ込んだのもある。大抵は西洋紙である。また西洋字である。甲野さんは一と目見て、すぐ机の上へ重ねる。中には半行も読まずに置き易《か》えるのもある。しばらくすると、重《かさ》なるものは小一尺の高《たかさ》まで来た。抽出は大抵《たいてい》空《から》になる。甲野さんは上下《うえした》へ手を掛けて、総体を煖炉の傍《そば》まで持って来たが、やがて、無言のまま抛《な》げ込《こ》んだ。重なるものは主人公の手を離るると共に一面に崩《くず》れた。
葡萄《ぶどう》の葉を青銅に鋳《い》た灰皿が洋卓《テエブル》の上にある。灰皿の上に燐寸《マッチ》がある。甲野さんは手を延ばして燐寸の箱を取った。取りながら横に振ると、あたじけない五六本の音がする。今度は机へ
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