冷している。蹲踞《うずくま》る枕元に、泣き腫《はら》した眼を赤くして、氷嚢の括目《くくりめ》に寄る皺《しわ》を勘定しているかと思われる。容易に顔を上げない。宗近の阿父《おとっ》さんは、鉄線模様《てっせんもよう》の臥被《かいまき》を二尺ばかり離れて、どっしりと尻を据《す》えている。厚い膝頭《ひざがしら》が坐布団《ざぶとん》から喰《は》み出して軽く畳を抑えたところは、血が退《ひ》いて肉が落ちた孤堂先生の顔に比べると威風堂々たるものである。
宗近老人の声は相変らず大きい。孤堂先生の声は常よりは高い。対話はこの両人の間に進行しつつある。
「実はそう云うしだいで突然参上致したので、御不快のところをはなはだ恐縮であるが、取り急ぐ事と、どうか悪しからず」
「いや、はなはだ失礼の体《てい》たらくで、私こそ恐縮で。起きて御挨拶《ごあいさつ》を申し上げなければならんのだが……」
「どう致して、そのままの方が御話がしやすくて結句《けっく》私の都合になります。ハハハハ」
「まことに御親切にわざわざ御尋ね下すってありがたい」
「なに、昔なら武士は相見互《あいみたがい》と云うところで。ハハハハ私などもいつ何時《
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