なんどき》御世話にならんとも限らん。しかし久しぶりで東京へ御移《おうつり》ではさぞ御不自由で御困りだろう」
「二十年目になります」
「二十年目、そりゃあそりゃあ。二《ふ》た昔《むかし》ですな。御親類は」
「無いと同然で。久しい間、音信不通《いんしんふつう》にしておったものですからな」
「なるほど。それじゃ、全く小野|氏《うじ》だけが御力ですな。そりゃ、どうも、怪《け》しからん事になったもので」
「馬鹿を見ました」
「いやしかし、どうにか、なりましょう。そう御心配なさらずとも」
「心配は致しません。ただ馬鹿を見ただけで、先刻《さっき》よく娘にも因果《いんが》を含めて申し聞かしておきました」
「しかしせっかくこれまで御丹精になったものを、そう思い切りよく御断念《おあきらめ》になるのも惜《おし》いから、どうかここはひとまず私共に御任せ下さい。忰《せがれ》も出来るだけ骨を折って見たいと申しておりましたから」
「御好意は実に辱《かたじけ》ない。しかし先方で断わる以上は、娘も参りたくもなかろうし、参ると申しても私がやれんような始末で……」
小夜子は氷嚢《ひょうのう》をそっと上げて、額の露を丁寧に
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