中もたくさんある。僕もその一人《いちにん》かも知れない。知れないどころじゃない、たしかにその一人だろう」
小野さんはこの時始めて積極的に相手を遮《さえ》ぎった。
「あなたは羨《うらやま》しいです。実はあなたのようになれたら結構だと思って、始終考えてるくらいです。そんなところへ行くと僕はつまらない人間に違ないです」
愛嬌《あいきょう》に調子を合せるとは思えない。上皮の文明は破れた。中から本音《ほんね》が出る。悄然《しょうぜん》として誠を帯びた声である。
「小野さん、そこに気がついているのかね」
宗近君の言葉には何だか暖味《あたたかみ》があった。
「いるです」と答えた。しばらくしてまた、
「いるです」と答えた。下を向く。宗近君は顔を前へ出した。相手は下を向いたまま、
「僕の性質は弱いです」と云った。
「どうして」
「生れつきだから仕方がないです」
これも下を向いたまま云う。
宗近君はなおと顔を寄せる。片膝を立てる。膝の上に肱《ひじ》を乗せる。肱で前へ出した顔を支える。そうして云う。
「君は学問も僕より出来る。頭も僕より好い。僕は君を尊敬している。尊敬しているから救いに来た」
「救
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