君に対して全然無効になる訳だ」
 小野さんはまだ黙っている。
「僕はいくら閑人《ひまじん》だって、君に軽蔑《けいべつ》されようと思って車を飛ばして来やしない。――とにかく浅井の云う通なんだろうね」
「浅井がどう云いましたか」
「小野さん、真面目《まじめ》だよ。いいかね。人間は年《ねん》に一度ぐらい真面目にならなくっちゃならない場合がある。上皮《うわかわ》ばかりで生きていちゃ、相手にする張合《はりあい》がない。また相手にされてもつまるまい。僕は君を相手にするつもりで来たんだよ。好いかね、分ったかい」
「ええ、分りました」と小野さんはおとなしく答えた。
「分ったら君を対等の人間と見て云うがね。君はなんだか始終不安じゃないか。少しも泰然としていないようだが」
「そうかも――知れないです」と小野さんは術《じゅつ》なげながら、正直に白状した。
「そう君が平たく云うと、はなはだ御気の毒だが、全く事実だろう」
「ええ」
「他人《ひと》が不安であろうと、泰然としていなかろうと、上皮《うわかわ》ばかりで生きている軽薄な社会では構った事じゃない。他人《ひと》どころか自分自身が不安でいながら得意がっている連
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