つら》なっている。そうして宗近君はこの未来を司《つかさ》どる主人公のように見えた。
「昨日《きのう》は失敬した」と宗近君が云う。小野さんは赤くなって下を向いた。あとから金時計が出るだろうと、心元なく煙草へ火を移す。宗近君はそんな気色《けしき》も見えぬ。
「小野さん、さっき浅井が来てね。その事でわざわざやって来た」とすぱりと云う。
小野さんの神経は一度にびりりと動いた。すこし、してから煙草の煙が陰気にむうっと鼻から出る。
「小野さん、敵《かたき》が来たと思っちゃいけない」
「いえけっして……」と云った時に小野さんはまたぎくりとした。
「僕は当《あて》っ擦《こす》りなどを云って、人の弱点に乗ずるような人間じゃない。この通り頭ができた。そんな暇は薬にしたくってもない。あっても僕のうちの家風に背《そむ》く……」
宗近君の意味は通じた。ただ頭のできた由来が分らなかった。しかし問い返すほどの勇気がないから黙っている。
「そんな卑《いや》しい人間と思われちゃ、急がしいところをわざわざ来た甲斐《かい》がない。君だって教育のある事理《わけ》の分った男だ。僕をそう云う男と見て取ったが最後、僕の云う事は
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