。これは本気の沙汰《さた》である。
しばらく黙っていた先生は、やや落ちついた調子で、
「君は結婚を極《きわ》めて容易《たやすい》事のように考えているが、そんなものじゃない」と口惜《くちおし》そうに云う。
先生の云う主意は分らんが、先生の様子にはさすがの浅井君も少し心を動かした。しかし結婚は便宜《べんぎ》によって約束を取り結び、便宜によって約束を破棄するだけで差支《さしつかえ》ないと信じている浅井君は、別に返事もしなかった。
「君は女の心を知らないから、そんな使に来たんだろう」
浅井君はやっぱり黙っている。
「人情を知らないから平気でそんな事を云うんだろう。小野の方が破談になれば小夜は明日《あした》からどこへでも行けるだろうと思って、云うんだろう。五年以来|夫《おっと》だと思い込んでいた人から、特別の理由もないのに、急に断わられて、平気ですぐ他家《わき》へ嫁に行くような女があるものか。あるかも知れないが小夜はそんな軽薄な女じゃない。そんな軽薄に育て上げたつもりじゃない。――君はそう軽卒に破談の取次をして、小夜の生涯《しょうがい》を誤まらして、それで好い心持なのか」
先生の窪《くぼ
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