だと思う。
「そう頭から冷やかしちゃ話が出来ない」と故《もと》のようなおとなしい調子で云う。
「ハハハハ。そう真面目《まじめ》にならんでも好い。そうおとなしくちゃ損だぞ。もう少し面《つら》の皮を厚くせんと」
「まあ少し待ってくれたまえ。修業中なんだから」
「ちと稽古《けいこ》のためにどっかへ連れて行ってやろうか」
「何分|宜《よろ》しく……」
「などと云って、裏では盛《さかん》に修業しとるかも知れんの」
「まさか」
「いやそうでないぞ。近頃だいぶ修飾《しゃれ》るところをもって見ると。ことにさっきの巻煙草入の出所《でどころ》などははなはだ疑わしい。そう云えばこの煙草も何となく妙な臭《におい》がするわい」
浅井君はここに至って指の股に焦《こ》げついて来そうな煙草を、鼻の先へ持って来てふんふんと二三度|嗅《か》いだ。小野さんはいよいよノンセンスなわる洒落《じゃれ》だと思った。
「まあ歩きながら話そう」
悪洒落の続きを切るために、小野さんは一歩橋の真中《まんなか》へ踏み出した。浅井君の肘《ひじ》は欄干を離れる。右左地を抜く麦に、日は空から寄って来る。暖かき緑は穂を掠《かす》めて畦《あぜ》を
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