騰《のぼ》る。野を蔽《おお》う一面の陽炎《かげろう》は逆上《のぼせ》るほどに二人を込めた。
「暑いのう」と浅井君は後《あと》から跟《つ》いて来る。
「暑い」と待ち合わした小野さんは、肩の並んだ時、歩き出す。歩き出しながら真面目《まじめ》な問題に入る。
「さっきの話だが――実は二三日前井上先生の所へ行ったところが、先生から突然例の縁談一条を持ち出されて、ね。……」
「待ってましたじゃ」と受けた浅井君はまた何か云いそうだから、小野さんは談話の速力を増して、急に進行してしまう。――
「先生が随分はげしく来たので、僕もそう世話になった先生の感情を害する訳にも行かないから、熟考するために二三日の余裕を与えて貰って帰ったんだがね」
「そりゃ慎重の……」
「まあしまいまで聞いてくれたまえ。批評はあとで緩《ゆっ》くり聞くから。――それで僕も、君の知っている通《とおり》、先生の世話には大変なったんだから、先生の云う事は何でも聞かなければ義理がわるい……」
「そりゃ悪い」
「悪いが、ほかの事と違って結婚問題は生涯《しょうがい》の幸福に関係する大事件だから、いくら恩のある先生の命令だって、そう、おいそれと服
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