を聞いてくれるのかい」
「本当に聞いとる。それから」
「それからって、まだ何にも話しゃしないじゃないか。――金の工面はどうでもするが、君に折入って御願があるんだよ」
「だから話せ。京都からの知己じゃ。何でもしてやるぞ」
調子はだいぶ熱心である。小野さんは片肘《かたひじ》を放して、ぐるりと浅井君の方へ向き直る。
「君ならやってくれるだろうと思って、実は君の帰るのを待っていたところだ」
「そりゃ、好《え》え時に帰って来た。何か談判でもするのか。結婚の条件か。近頃は無財産の細君を貰うのは不便だからのう」
「そんな事じゃない」
「しかし、そう云う条件を付けて置く方が君の将来のために好《え》えぞ。そうせい。僕が懸合《かけお》うてやる」
「そりゃ貰《もら》うとなれば、そう云う談判にしても好いが……」
「貰う事は貰うつもりじゃろう。みんな、そう思うとるぞ」
「誰が」
「誰がてて、我々が」
「そりゃ困る。僕が井上の御嬢さんを貰うなんて、――そんな堅い約束はないんだからね」
「そうか。――いや怪しいぞ」と浅井君が云った。小野さんは腹の中で下等な男だと思う。こんな男だから破談を平気に持ち込む事が出来るん
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