遊んどる暇があるようでは駄目じゃな、君。ちっとなんぞ金儲《かねもうけ》の口はないかい」
「金儲は僕の方にゃないが、君の方にゃたくさんあるだろう」
「いや近頃は法科もつまらん。文科と同じこっちゃ、銀時計でなくちゃ通用せん」
 小野さんは橋の手擦《てすり》に背を靠《も》たせたまま、内隠袋《うちがくし》から例の通り銀製の煙草入を出してぱちりと開《あ》けた。箔《はく》を置いた埃及煙草《エジプトたばこ》の吸口が奇麗に並んでいる。
「一本どうだね」
「や、ありがとう。大変立派なものを持っとるの」
「貰い物だ」と小野さんは、自分も一本抜き取った後で、また見えない所へ投げ込んだ。
 二人の煙はつつがなく立ち騰《のぼ》って、事なき空に入る。
「君は始終《しじゅう》こんな上等な煙草を呑《の》んどるのか。よほど余裕があると見えるの。少し貸さんか」
「ハハハハこっちが借りたいくらいだ」
「なにそんな事があるものか。少し貸せ。僕は今度国へ行ったんで大変|銭《ぜに》がいって困っとるところじゃ」
 本気に云っているらしい。小野さんの煙草の煙がふうと横に走った。
「どのくらい要《い》るのかね」
「三十円でも二十円でも
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